「そんなこと話して、お前はやりにくくないのか?生徒にそんなこと話してどうする?生徒はおもしろがって喜ぶかも知れないけど、それでプラスになることがある?」
キツい言い方をしてしまったかと思ったが、金森は笑って答えた。
「えへへ。そうですよね~!調子に乗って、話しちゃいました」
教育実習生を受け入れるのは初めてじゃないが、ここ数年なかった。
直を愛してからは初めて。
直の担任をしていた時に、こんな状況にならなくて良かった。
もし、金森が生徒である直に『昔好きだった』なんて言ったら、直は毎日辛い想いをしただろうな。
「先生にお願いがあるんです」
窓に手をかけた俺の横に金森が立った。
ニコニコしながら、俺をじっと見つめた。
俺は窓を閉め、歩き出した。
「何?」
「教育実習が無事に終わったら、一度だけデートして欲しいんです!だめですか?」
天真爛漫だとも言えるが、かなりの鈍感。
俺は怒ってるんだぞ?
さっきのは、説教のつもりだったのに。