「仕方ねぇな…じゃあ一緒に行くか。でも、何て言えばいいんだろうな…久し振り過ぎて、わかんねぇや」

「普通にただいまって言えばいいんだよ!家に帰るんだから。そうだ!うちのお母さんも呼んで、鍋でもやろうよ!私いくらでも作るよ!」

「鍋かぁ…寒くなってきたから良いかもな」

ハヤトはこの時こう考えていた。

俺は一年前と中身は変わっていないと思う。でも、心の中は意外にも凄くスッキリしていた。

変に毎日イライラしていた昔の俺。暴力の魅力に取りつかれ、強さのみを求めて、自分から一人を求めていた。

そして一人になって自分の殻に閉じこもっていた俺を救ってくれたのは、新しく出会った仲間や、幼馴染の存在だった。

人と距離を置き、他人を拒絶していた俺を救ったのはまぎれもなく他人だったのだ…。

今なら解る…人は一人では生きていけない。誰かに救ってもらうとかじゃなく、人とかかわる事で、救いの道が見つかるのだと…。

それは特別な事なんかじゃない。普通なんだ…。

普通に人と話す。そして、笑う…そんな中に、俺にとっての救いがあったのだ。

まだ、これから先の人生もやりたい事も明確になった訳じゃない。しかも、まだまだ問題は山の様にある。

俺はこのまま生きて行こう。きっと、この道の先に答えはある。

「そう言えばマリコ、ヒサジが受験勉強で困っているらしいんだ。今度遊びに行って、勉強教えてやってくれよ…」

「ヒサジ君、高校行くんだ!私は全然オッケーだよ。もしかして、サヨちゃんも?」

「あぁ、一緒の高校目指して勉強しているみたいだぜ…二年のブランクはかなりキツイみたいだけどな」

「そっか、そっかぁ!何か楽しみだね。早くサヨちゃんに会ってみたいなぁ…」

俺はこの笑顔と、ダチさえいれば、とりあえず今は何もいらねぇな。