その人物はもちろんマリコであり、集団の間に割って入り、両手を広げてトウマの行く手を阻んでいた。

「こんな事ねぇ…でもこれは、昔からある伝統的な儀式なんだよ。だから、誰にも止められないのさ」

そう言うとフランケンは、マリコの肩に腕を回し、横からのぞき込む様に話しかけていた。背が低いマリコの背丈に合わせて屈む様な形で…。

「きゃっ!?ちょっと、触らないでよ!」

マリコは、肩に回されたフランケンの腕を振りほどき、軽く後ずさった…。そんなマリコを庇う様に素早く前に出たトウマは、眼光鋭く、フランケンを睨みつけた。

そんなマリコの様子を見たフランケンは高笑いをしだす。当然の流れか、周りの野次馬も笑いだす…。

「おい…てめぇ等殺すぞ?」

一年前の可愛いリーゼント野郎は何処へやら。トウマの身体からはありありと殺気が漏れていた。

「そんな怒るなよトウマちゃん。ただの挨拶だろ?それとも、この子はお前の彼女なのか?」

「それは……」

口ごもるトウマを見たフランケンは、先ほどよりも大きな笑い声をあげ、笑いだした。

「あははっ、お前、この子に惚れてるんだな?そうかそうか…確かに、可愛い部類の女の子だと俺も思うぜ」

フランケンは、そう言うとマリコに向って歩き出した。当然、トウマは行く手を遮り、拳を握り締めた。その様子を見たフランケンは、トウマの肩に手を置くと…

「ここは、人眼につくから嫌なんだろ?あわてんなよトウマ…ちゃんと相手してやるから。それにしても…ふーん。」

トウマ越しにマリコを凝視するフランケン。マリコは、先ほどのスキンシップもあってか、少し怯えている様子である。