俺の言葉を聞いたジンは、ぴたりと動きを止めた…。つられる様にゲンも動きを止める。

そんな二人は、俺とヒサジに背中を向けたまま。そして、ジンは口を開いてくれた…。

「…普通の家庭は子供が産まれたら、両親の加護を受け、育ててもらう。文字を書く事を教えてもらい、人間との接し方を教えてもらい、学校で集団生活を教えてもらう」

今までのジンの話し方とは違い、今は淡々と言葉を紡いでいた。その話し方は、ゲンの言葉と聞き間違いてしまうほどに…。

そんな様子のジンを俺もヒサジも…そしてゲンも口を挟まず無言で見守る。

「そんな当たり前のエスカレーター式の生活の中では、似たような人間が出来上がるのは当然の成り行きだ…そして、この町に居る人間も例外ではない。家庭環境が複雑とか、虐待がひどかったとか、そんな行き方をしていてもそんなに変わらないもんさ…」

「…お前等は違うと…そう言いたいのか?」

ジンの言っている事はもっともだ。俺もジンのに同感だ…生活環境が似れば、当然似通った人間が出来上がる。そして、イジメや虐待は辛い過去として残りはするが、それは仕方のない事。

割り切るしかない。ついていなかったと…その上で、自分の意思を強く持って生きるしかない。それがどんなに辛い事であっても、現実から逃げだしたいと思っても、最終的には自分の意志で乗り切るしかない。

それがどんなに理不尽な事でもな。結局は、似たような人間が出来上がる…それが、生活習慣というものだと思う。

「あぁ、俺達は違うね。なぁハヤト…『未出生児』って知っているかい?」

「…知らないな」

初めて聞く言葉だ。

「それがハヤトの質問に対する答えだ…じゃあ俺達はこれで失礼するよ。うちらのメンバーを宜しく頼むよハヤト…」

その言葉を残し、ジンとゲンは俺達の前から姿を消した。そして数年後、再び俺はこの二人に会う事になる。

最悪の形で…。