「お前にはやらなきゃいけない事があるんだろうヒサジ…守りたい人がいるんだろう?これ以上この事件に首を突っ込めば、今度はお前自身が奴等に狙われかねないんだよ。カズヤも同様にな…それでもヒサジは聞きたいか?」

「それは…」

俺が事件に巻き込まれるのは別に良い。だが、カズヤに危害が加わるのは絶対にダメだ…それに俺には行かなければいけない場所がある。

カズヤが身の危険をかえりみずに駆けつけて来てくれた理由…サヨの記憶を取り戻す切っ掛けが俺にあるかもしれないという可能性。それが本当なのであれば、俺はすぐにでもサヨの元に行きたい…。

俺は……。

決断しかねている俺に、カズヤが話しかけてきた。

「なぁヒサジ…俺は別にこの事件の真相なんて正直どうでも良い。ヒサジが我慢出来るなら、俺は今回の事をなかった事にしても構わないんだ。だからそんなに悩む必要はないんだぞ?」

カズヤは今回の事をなかった事にしてくれると言ってくれた。だが、カズヤはいきなり拉致されたんだ。それなりの身の危険を感じた筈だし、その原因を本当は知りたい筈だ…。

でも、カズヤはそれを我慢すると俺に言ってきた。それは他ならぬサヨの為、そして俺の為の我慢なんだろう…。その気持ちを俺が踏みにじる訳にはいかないだろうな…。

「解った…これ以上は聞かない。後はドラゴン達に任せるよ…」

「おう!俺達マスターに任せとけ」

ドラゴンは力強く俺に返事を返してくれた。

俺はこの件からもう身を引く事にした。結局の所、犯人の狙いも目的も解らずじまいだが、多分これでいいんだ…俺がこの件から身を引く事が、カズヤを助ける事に繋がるのならな…。