緻密な計画は目的を達成する為には不可欠だが、アクシデントには弱い。チーム間で停戦協定が結ばれている以上、小さないイザコザでは動乱は起きない…そう犯人達は考えていたに違いない。

でも実際はそうではないと見せる必要があった。

だからゲンにハヤトと接触する様に指示したのだ。表向きは、ハヤトを傘下に置く事が目的の様に仕向け、デスのメンバーを集めてのケンカをな…。

結果的に、これが犯人達をあせらせたのだ。

「どんな計画があったかは解らないが、この時のケンカが原因で犯人達はぼろを出したんだ…それが、ヒサジのレイプ事件だ」

どう考えてもあの鬼神ヒサジがそんな事する訳がない…この町にいる人間ならそう考えるに違いない。ジン自身もそう考えていた。

でもこれはチャンスだとジンは思ったのだ。噂でしかなかったレイプ事件の被害者も加害者も形的には揃ったこの状況がな…。

だから、『動乱』に発展させたのだ…ワザとな…。

「ヒサジが原因で動乱が起こる…それが犯人達の思惑の一つならそれに乗っかる。そして、裏切り者をおびき出す…あらかじめLAN通りに俺達が前乗りをし、ハヤト達を出迎える事で、犯人達をある程度特定する事に成功したんだ…マサやリュウ達のおかげでね」

「いえ…あれはジンさんの言う通りに動いただけです。それより、犯人達は一体何者だったんですか?ジンさんはもう気づいているんですよね?」

元レガシーのマサは相変わらずの敬語を使いながら、ジンに話かけていた…。

「なんとなくだけどね…でも俺達にはもう関係のない事だよ。裏切り者が解った以上これ以上の詮索は必要ない。必要なのはこれからの事だよ」

ジンはそう言うと、衝撃的な事を言い出した…。

「俺とゲンは明日、この町を去る。」