すぐに乱闘が起きるだろうと思い、身構えていた俺だが、これまた意外にも乱闘は起きなかった…。

勝ったチームは普通に喜び、負けたチームは普通に悔しがる…俺の目の前に広がる光景はまさに高校生らしい、情熱溢れる試合模様だった。

自然と俺も、試合を見てるのが楽しくなり、野次馬に混じって声援を送っていた…。

銀次も同様に…。

俺と銀次は二人して、職務放棄をしたのだ…。

そして優勝チームが決まり、野球大会は無事閉会した…。

「その後、みんなで焼肉を喰って、夜遅くまで騒いだんだ…あの日はみんな楽しそうだったよ。ケンカをした時とはまた違う楽しさがあった、ウケるだろヒサジ!!俺達は学校の体育すら突っ張ってやった事なかったのに、いざやってみたら楽しいの何のって…銀次さんは知ってたんだ、俺達不良の願いがな…」

俺にも解る気がする…。

不良達の願い…それは。

「普通への憧れ…」

「そう…人間は小さな切っ掛けで、色んな性格になる。そして不良というのは、自己をある意味厳しく律した存在なんだ。他人に依存しないかわりに大人を信用しない…狭い世界で生きる、大人と子供の中間の存在。そんな不良達が知らずに憧れているのが『普通』なんだ」