「ありゃあマズいな…全員の頭がトリップしてやがる。殺し合いが始まるよ…」

回りの野次馬が口々に、ヤバいヤバいと呟いていた…。

誰か止めろよ、などと言う声も聞こえてくる…。

だが誰も止めに入らない…。

止めに入った奴の末路なんて、火を見るより明らかだからだ…。

確実に殺される…。

だって正気じゃねぇんだから…。

俺も止めに入る気はなかった…。

犬死にはごめんだからな…。

そうこうしているうちに、緊張がピークに達しようとしていた…。

そして後は合図だけとなった時…あの男が出てきた。

その男は、スカジャンにジーンズに黒いサングラスの格好で、ゆっくりと両者の間に歩んで行った…。

真夏の昼下がりだ…スカジャンなんて着て暑くねぇのかと思ったが、その男は何とも涼しそうな表情で歩いて行く…。

そして両者の間に入って一言…。

「お前等ダセェんだよっ!!!!」

声を最大限に張り上げたその声は、野次馬やシャブ中達を黙らせるだけのインパクトがあった…。

だがそれも一時…男の言葉を理解したシャブ中達は、当然怒りを爆発させた…。