原因は、彼の気の多さ。つまり浮気だ。
 一度や二度ならきっと許せていただろうに……彼の性がそれだけに留まることはなかった。
 何度となく訪れた彼の部屋、ベッドの上で見知らぬ女と絡み合うその姿を、幾度となく目の当たりにしてきた。
 私も私で何度となく繰り返されてるなら、いい加減に愛想がつきるはずなのに。
 私もかなりのバカなのかもしれない。
 そこまで自分の気持ちを踏み躙られているの言うのに……きっとこれが私の性なのかもしれない。
 彼を責めて、それでも傍に居ることを選んだ。
 いや、食い下がった、と言った方が正しい。
 その姿は自分でも“狂ってる”そう思った。
 きっとそうだ、これはもう病気なのだ。
 彼が浮気を繰り返すように、私も……。

「……は、はははっ」
 急に彼が低くうなるように笑いだした。
 言葉のごとく――今にも消え入りそうな――虫の息だった彼が。
「とうとうやったな」
と、意味深な言葉を、ゴポリと深紅の血と共に投げ掛けてくる。
「どういう意味?」