つい、弟に怒鳴ってしまった。
そんなあたしを見て、お父さん、お母さんの顔が真剣になる。

いつもお調子者の龍さえも、体を起こして正座をしている。



4人の間に張りつめた空気が流れる。


「あのね、あたし高校が受かっても、夢が出来なかった。
だから勉強にも精が出なかったの。」



「確かに、この間のテストの順位も悪かったわね。」

いつもこんな嫌みに腹を立てて、喧嘩をしてしまうけど、今日だけわ、グッと我慢。



「でもね夢が出来たの、やっと。」


「そうか、よかったじゃないか。で、その夢ってなんなんだ?」

うん、それが大事なんだよね。

でも…、その先がなかなか口に出せない。

「…えっと……」



「美香、いってごらん。」
優しく笑ってくれるお父さん、でもその横のお母さんわ、口を固く結んでいる。



どうせいつか言わなきゃいけない時がくるんだ。
今言った方が、家でも練習できる。早ければ早い方が良い。



「うん、あのね…あたしっ…



ミュージシャンになりたいの。」