「待って!」
ガシッ
逃げようとした瞬間、細いけど、筋肉がしっかりついている腕に捕まれてしまった。
「は…離してください。」
「俺が…俺が美香ちゃんを選んだ理由あるよ。いっぱいある。」
沢北さんわ、そう言うとあたしを選んだ理由を、教えてくれた。
「まず、リステンダーズが好きってだけで、選んだ理由わ大きい。
だって俺がリステンダーズの曲を聞いて感じたように、美香ちゃんも感じたわけだから。
それから…、後1個。
歌ってる時の、美香ちゃん楽しそうだった。
今までで一番きれいにハモったけど、それよりも…、楽しそうに歌う美香ちゃんの隣で歌ってると、俺も楽しくなるんだ。
だから選んだ。
楽しんで歌うのが一番大事だと思うから。
……でも、もういいよ。
美香ちゃんが楽しんで歌え無いなら。」
そう言われても、うつ向くことしか出来ない。
沢北さんがあたしを選んでくれた理由わ、すごく深い。
だけど、もう…
きっと沢北さんわ、あたしに失望している。
心狭いなって。
こんだけでって。
だからあたしわ、何も言えない。
「美香ちゃん、今までありがと。
よかった。楽しかった。じゃあね。」
そう言うと、捕まれていた腕が離された。
でも、あたしの足わ、前に進んでくれない。