「オーディション?」
「うん、そう。どう…かな?」
「どうかな?って言われても、いきなりで、ちょっと……」
「そっか、でも俺わ、美香ちゃんとだったら、いけるってあの時思ったんだ。
声と声が重なった瞬間、バァーって鳥肌がたって……、うん。これ俺のメアド。決心ついたら、メールして。
じゃ、良い返事まってるから。」
右手を挙げて、レジの方へいっちゃった…。
そして、お金を払いあって、外へ出る時、クルッとあたしの方を見て、「俺、本気だから。」そう一言いって出て行った。
あの顔わ、きっと本気だと思う。
でも――…、一緒に組もう、一緒にバンドを組もう。だなんて…、そんなの絶対無理に決まってる。
それに、オーディションを近いうちに受けよう、だなんて…
そんな自信…あたしにわ無い。
あたしにわ、無理だよ……
1人残されたカフェで、うつむきながら、沢北さんの言葉を1つ1つ思い出して、そしてそれを全部否定し続けていた。