平田はまだ歌い続けている。

燃え上がる炎が、よほどショックだったのだろう。


私は平田のポケットから、携帯電話を取り出した。


変な気持ち悪いぶどうのストラップには目もくれず、私は携帯に保存されている写真のフォルダを開いた。。


ネイルアートや、鏡にむかってポーズをとる大量の平田の写真の中から、私は目当ての物を見つけた。


「おばあさん!これです!この人!」


前、合コンの後にファーストフード店で平田が偶然撮った、目つきの鋭い少年の写真だ。


「これか!」

婆が言う。


「知ってますか?」


「こいつ、このへんで引ったくりやアベック狩りしたりしてる不良チームの一人じゃ」


「警察に連絡してきましょうか」


「いや。わしは自分の力で捕まえる」

婆はそう言うと赤頭巾を被って、走っていった。



「すぐに見つかるんでしょうかね」

いつの間にか歌い終えた目黒さんが言った。


「私たちはとりあえずオード卵の家に行こうよ」


「そうですね。でも……」
目黒さんは、そう言って、平田の方を指差した。


首にロープが絡まって、ぐったりしている。


「平田!」

私は平田に駆け寄った。


「おいらじゃねえ!平田の野郎が勝手に絡まったんだ!」


「本当?」


「多分本当です」

目黒さんが言った。


「どうしよう……」


平田を抱えながら、オード卵を逃がさないように歩くのは至難の業だ。


「とりあえず、平田先輩が起きるまで、ここにいましょうか」

目黒さんが言う。


「それしかないね」

私は言った。