炎が上がる。



「きえぇぇえぇえ!」


平田が叫ぶ。


「もぉえろょもぇろぉよぉほのおょもぉえぇろぉおぉ!」

何を思ったか、平田は歌い始めた。


「きぃのこのかき揚ぁげぇ天まで届けぇ!」

目黒さんもそれに続いた。
食いしん坊バージョンだ。

オード卵は必死に放火魔の追跡を続けようとしているらしかったが、平田が立ち止まっているので、そこから動けずにいた。


諦めたオード卵も歌に加わった。



オード卵は、かなりの美声の持ち主だった。


よく響く、低い、太い声だ。


その声を聞き付けて、赤頭巾婆が家から出てきた。


「何事じゃあ!」


婆は叫んだ。


「おばあさん!ゴミが燃えています!」

私は大声で言った。



「こいつはいかん!」

婆はそう言うと、ゴミバケツを持って家に駆け込んだ。

それからすぐに、ゴミバケツいっぱいに水を入れて戻ってきた。


燃えているゴミに大量の水をかけると、すぐに火は消えた。



「ふぅ」


婆は赤頭巾を取って、その場に座り込んだ。


平田と目黒さんとオード卵はまだ歌い続けている。


「とりあえず燃え広がらなくて良かったわい」

婆が言う。


「はい」


「うーんっ!糞っ。どこのどいつじゃい!」


「私、犯人見ました」


「おぇ!?誰じゃっ!」


「目つきの鋭い若い男の子で……前も私この近くで弟と見たんです。その子」


「とっ捕まえてやる!ミチコちゃん、似顔絵を描くんじゃっ」


「わかった」


婆がゴミの山から捜し出したスケッチブックとペンで私は似顔絵を描いた。



「これはっ!」


婆が叫んだ。