「あ」


男の手元にはライターが見える。


「ほ、放火魔!」

目黒さんが言う。


「どうしよう……」


「ぼっ僕が注意してきます」

平田が言った。

めずらしく男らしい。


「いやっ!ここはおいらが!」


オード卵が言う。


「そんなこと言って、オード卵君は、逃げ出すつもりでしょう!」

平田が言う。

「くっ!」

オード卵は悔しそうに言った。


「あ!ミチコ先輩!あの男、ペットボトルから水みたいなの撒いてますよ!」


目黒さんが言う。


「ガソリン!?だとしたらまずいよ!」


「よし、みんなで行きましょう!」

平田が言う。


「え!私もですか」


目黒さんが言う。


「そうだ!みんなで力をあわせるんだ!」

オード卵が言った。



「わあ!ライターの火、近付けてますよ!」

目黒さんが叫ぶ。



「みんなで捕まえましょう!」


平田はそう言って、オード卵とともに走りだした。


私と目黒さんも、それに続いた。




「わぁあぁぁあぁぁ!」


勇ましい掛け声で平田は男に襲い掛かった。


男が振り向いた。


知っている顔だ。


目つきが鋭い、小柄の若者。


少年は、ライターを放り投げると、走りだした。



ガソリンで湿ったところに火が落ちる。



「きゃ!」


私は叫んだ。