「ここにはだいたい37人のホームレスがいるんだぁ」

ししゃもさんが言った。


「へえ。そんなに」


「まあ、増えたり減ったりだがなぁ」


「どこに行っちゃうんですか」


「まあ、いろいろだぁ。死ぬ奴もいるし、入院するやつもいる」


「大変ですね」


「死ぬやつはまだ良いが、入院はきついなぁ。金、払えないからなぁ」


「そういえば、この前私が行った病院でも、ホームレスの人が入院してるっていう噂聞きました」


「おっ。それ、ワシらの仲間かもしれないなぁ」


「最近入院した人がいるんですか」


「よっちゃんイカの旦那が、ホームレス狩りにあって運ばれたんだぁ」


「すごい名前ですね」


「ワシらのチームは、海産物関係のコードネームをつかってるんだぁ」


「へえ……」


ホームレスの世界も奥が深い。


ししゃもさんと話していると、遠くから名前を呼ばれた。


「ミチコさーんっ」


女の声だ。


遠くで、女の子が私に向かって手を振っている。

小柄で髪の長い女の子だ。

立ち上がって近付いてみると、それは橋本ミミだった。