「やばいなぁ」

山嵐ノゾミが言う。


「そうだよね」

私が言うと、山嵐ノゾミはため息をついた。


「あたい、人の男を奪う趣味は全く無いんだけどねー。なんか、そんな感じになっちゃってない?」


「なってるかも」


「あの子が沼袋ちゃんのこと好きだったのは知ってたんだけどね……。あたいとしたことが、とんだ失態だよ」


「山嵐さんは、沼袋部長と付き合ってるの?」


「まさか。ただの男友達だよ。ただ……友達以上、恋人未満ってやつかな」


「おうちデートしてたよね?」


「もちろん、一線は越えてないよ」


「ミミさんの気持ちを知りながらデートしたの?」


「あたいも女だからさ。ほら、あんたんとこの部長、格好良いし、やさしいから」


「確かにそうだけど……」


「ミミがさ、もう冷めたって言ってたのもあるんだ。今思えば、ただの強がりだったのかな」


「ミミさんが冷めたって言ってたの?」


「そだよ。ただ、沼袋ちゃんが襲われて入院してから、また復活したのかね」



それはあるかもしれない。

と、私は思った。


沼袋部長が怪我をして、心配になって、ミミは、自分の気持に気付いたのだろう。


「あの子は男運悪いんだよ」


山嵐ノゾミが言った。


「どういうこと?」


「好きになる人が、不幸になる」