「からかわれているとか騙されているとかそんな事考えないけど、ただ、何で私なの?って不思議。信じられないって思うばっかり。だから、女優さんと噂になった時、妙に納得しちゃった。そうだよね。当たり前だよね。って・・・私はたまたま運が良かっただけなんだって。噂が本当だったら、自分がどうなっちゃうか分からないけど。それでも、私じゃなくて良かったって。相応しい相手が見つかって良かったね。って・・・ファンとして・・・祝福できるんじゃ・・・」

ボロボロとまた涙を流し、最後の言葉は泣き声に混じって聞き取れなかった。

「ねぇ聞いて?」

彼女の両肩に手を置き胸から離した。

そして、そっと両頬を包み込み、うつむいている彼女の顔を上げ視線を合わせる。

泣きはらした目でチラッと見ると、すぐに目線は下に行く。

「だーめ。ちゃんと俺の目、見て?」

ちょっと甘えた声で言っても掌で顔を覆う彼女は

「みっともない顔。見せたくない」

と言う。