「前に彼女の話をしてくれたじゃん?相当真剣に恋愛してるんだなって思った。だけど今日の事知って、俺みたいに音楽しかやってないヤツと違って、お前はただのタレントに成り下がったのかな?って思ったらちょっと意地悪してみたくなった。それと、噂の相手と収録があった日、何かあったでしょ?相談してくれれば良かったのに何も言わないからさ?タレントの仕事が増えてから俺とお前の間に壁が出来ちゃったのかと思ったら八つ当たりしてたんだよね・・・」

缶コーヒーをクイっと一口飲み

「今日、いつもと変わらない態度でスタジオに入ってきたら一発殴ってたかも」

俺に拳を見せニヤっと笑った。

拳をじっと見つめる。

言葉が出てこない。


付き合いはそんなに長い訳ではない。

けれども、同じ方向を目指して俺達は突き進んできた。

時間とかそんなの関係ないと思えるくらい、内容の濃い付き合いをしてきたと思う。

いい訳になってしまうかもしれないけど、毎日毎日仕事に振り回されて心身ともに余裕がなかった。

だから、メンバーが心配してくれている事なんてもちろん気がつくハズもなく。

まだまだ今の状態を維持するのは大変努力しなくちゃいけないと思うけど、時には周りを見渡すのも良いかもしれない。

ひょっとしたら身近にいる人達に心配かけたり、知らないうちに傷つけてしまっているかもしれない。

そんな事を思うと不安になるけど、彼の気持ちが嬉しくて心が温かくなった。