「缶コーヒー飲まない?」

昼間「二股かけてたの?」とメールしてきたメンバーが俺に近付き、入口へ親指を向けスタジオを出る様合図した。

コクリと頷き後をついていく。

スタジオを出て、真っ直ぐのびた通路突き当たりにある自動販売機で缶コーヒーを二本買い、その一本を俺に渡すと壁に寄りかかった。

俺もつられて寄りかかる。

「昼間のメール。悪かったな」

俺より二つ年上のこの人は、二つしか変わらないとは思えないくらい落ち着きがあって、何でも頼れる兄貴のような存在。

どんな事でも質問すると「俺の意見だけどね」と必ず添えた後で的確な意見を述べてくる。

すぐに自分の中だけでウダウダ、モヤモヤ考えてしまう俺と違うため、仕事でもプライベートでも悩んだり迷ったりすると話を聞いてもらいたくなる。

今日のことも本当は相談しようと思っていた。

なのに昼間のメールでショックを受けていた俺は、どう話を切り出していいのか分からなかった。

だから、話しかけられて正直嬉しかった。