俺だって、本当は歌一本で名を上げたかったよ?

けど、大好きな歌が唄えなくなるかもしれないって危機を感じたから、だから、どんな仕事でも真剣に受けてきたのに。

スタッフやバンドメンバーには、それなりに迷惑かけてる事があるけど、決して人を傷つけ踏み台にしてここまで上ってきたわけじゃない。



「はようございます・・・」

どよ~んとした顔で登場した俺に、スタジオ内が一瞬静かになった。

スタッフ達は今日の出来事を知っているのか、スタジオ内の雰囲気に重い空気が漂う。

俺の本当の彼女が一般人だという事はスタッフは知らない。

ただ、俺の落ちに落ちたテンションで何かを察知したのだろう。

スタッフと目が会うと、皆、キョロキョロと目を泳がし視線をそらす。


ここは弁解した方が良いのか?

初めてのスキャンダルに正直どう対処して良いのか分からない。

何事もなかったかの様に装うほど、俺は出来た芸能人ではない。

ただの音楽が歌が好きなだけの男だ。