収録後はレコーディングが入っているし「仕事」だと言ってしまえば簡単に断れる。

別にオドオドしてなくても良いじゃん。

小心者の俺は自分に苦笑い。

スタジオを出た俺は、足取り軽やかに楽屋へ戻った。

カバンを左手で持ち、レコーディングスタジオへ行くため持ってきてあったギターケースを右肩にかけて楽屋を出る。

先日メンバーに「欲求不満?」って聞かれてしまった曲を口ずさみ「超エッチな曲だけどカッコいいじゃん」って自己満足しながらテレビ局の通路を歩いていた。

「先ほどはお疲れ様でした」

さっき隣で散々聞いた艶っぽい声が通路に響き、思わず振り返ってしまった。

「あ・・・お疲れ様でした」

キャップのつばを右手で軽く押さえ深く頭を下げた。

「これから食事でもどうですか?」

「え・・・」

あれって番組を面白くさせるための冗談でしょ?