どちらからともなく唇を合わせる。


もう慣れたその唇も、あたしの心をかき乱す。

いつまでたってもこの緊張感は拭えない。


彼の胸元をギュッと握って、その呼吸に合わせる。


この雨で、外からは何も見えないだろう。

でも、そんな外のことなんかもう今はどうでもよかった。


彼とこうしている時間は、何もかも、意識から抜け落ちるんだ。



彼の手が、あたしの髪を撫で上げる。

項から、後頭部へ。

その手はゆっくりと、ゆっくりと、何度も髪を撫でる。


愛しそうに。


あたしは彼の胸元から首筋へ腕を移し、もっと、もっと彼に近寄れるように、その手を首に絡ませる。


あたしたちの間には紙切れ1枚存在してほしくない。


まるで、皮膚と皮膚がくっついているかのように、その空間を埋め合わせる。




会えなかった時間を埋めるかのような長いキス。


求めても、求めても、まだ充ち足りない気がして、もっと、もっとと、お互いの舌を絡ませた。



息つく間なんてなくていい。

彼の吐息も、あたしの吐息も、混じりあうような、そんな時間。


頭の芯が痺れて、もう何も考えられない。


罪も、罪悪感も消えうせたこの時間。



あたしは、少女なんかじゃなくって、悪女なんだ。