雨音はますます強くなり、ワイパーの動いていないフロントガラスは、流れ落ちる雨で視界が遮られている。


濃くなった宵闇は、すでに闇になった。


ここにはあたしたちしかいない。

そんな錯覚を覚えるほど、狭い車内はあたしたちの空気に支配されていた。



隣にいた彼は、あたしを引き寄せるとギュッとその胸に抱いた。



『俺も会いたかった……』


囁くようなその声に、心が震える。


嘘でもいい。

今だけの嘘でもいい。


彼も同じ気持ちだった、それだけであたしの心は満たされる。



彼と会えない日々は、まるで音のない世界のように静かに過ぎていく。


だけど。


こうして彼といる間は、生まれ変わったみたいに世界が動き出す。


現実が、やってくる。


いや。


現実なのかはわからない。


この時間こそが非現実で夢の中なのかもしれない。


何でもいい。


彼といるこの時間が、あたしの力なんだ。