「例えば……辛いこととか最近あった? なんでもいいよ、悲しかったり、辛かったりしたこと」

それでも、日下さんの声は打って変わって優しいもので。

きっと彼女は彼女で、私に気を使ってくれたり、みんなのことを考えてくれたりしている。


だからその質問にはゆっくり頷いた。


とても、聞き方が大きかったから。

悲しいことも、辛いことも、毎日ある。

むしろない人なんているんだろうか。



「いじめ……とかはなかったよな?」

青野君が不安そうな声を零す。

「いじめてないと思ってたって、違うかもしれないじゃん。そんなの本人しかわからないよ」


それはない、と答えようと思ったところ、間髪入れずに日下さんが噛みついた。

その声がちょっと刺々しかったので、自分の言葉を失ってしまう。