そして同時に気持ちがわかる気がする。


私も日下さんが羨ましい。

それは以前から少し思っていたことだけれども。

彼女から話を聞いて、ますます思うようになった。


ただ“いいひと”なのではない、痛みを知っているからこそ、彼女の言葉にはきっと嫌味がないのだ。



日下さんと霧崎君の顔を交互に見て、ちょっと気持ちが暖かくなる。


きっと、私が考えていたほど、ひとって難しくないし。

きっと、色んなことを抱え込むのは、私だけじゃない。



そう思ってちょっとほっとしてたところに。

大庭君が「ん?」と呟いたのが聞こえた。


「乾は霧崎に憧れていた、と言っていたな。その霧崎は日下を羨ましいという。なら日下はどうだ」

何かを考えるかのように、眉をひそめて。

大庭君が日下さんに質問をした。


「え、あたし? いや……憧れなら弥八子だけど」

「ええっ!?」


その答えに誰よりも早く私は声をあげてしまい、顔に血が昇る。