坂道を登るのが得意で、時には攻撃だってする。

確かに今まで持っていたウサギのイメージとは違う。


そして聞かせてくれた話と、このストラップの意味がゆっくり私の心に広がってゆく。



真に、優しい人なのだと思った。



「さっきさ『人の苦しみとか辛さなんて、他人には理解出来ない』って言ったじゃん? あれは確かにそうだと思ってる。だけどね、そう思って何もしないのとわかってもらおうと発信し続けるのは全く違うんじゃないかって思うんだ」


手の中のウサギがりりしい顔で私を見ていた。


「変な話だけどさ、弥八子が本当に辛いならうちにでも逃げておいで。お父さんこだわりの一戸建てだから部屋もあまってるしさ。いつでも泊まりに来ちゃってよー、で弟の相手してやって」


彼女の声はとても大きくて。

どうしたらそんなに大きくなれるんだろうと、ちょっと羨ましい。



だけどそれは彼女自身も色んな経験をして、辛い思いもして。

そこから頑張って坂道を登ってきたからこそ、そこに辿りつけたんだ。



温かい涙が零れた。

悲しいわけでも悔しいわけでもなく。

ただ単に彼女の言葉に涙がぽろぽろと落ちてゆく。