「だけどね、もちろんタダじゃなかった。
お母さんはあたしに『いじめられる原因は何だと思うの?』ってとことん突き詰めてきて。で、たぶん太ってることと暗いこと、って答えたら『じゃあ今日からダイエットよ! お母さんがきちんと栄養管理してあげるからね!』って言いだして。
しかも『じゃあ明日から毎日ひとりには必ず笑顔でおはようって言いなさい!』って。
次の日お母さんはあたしの髪を綺麗に結ってくれて、美味しいご飯を食べさせてくれて。
それで『今日が最後だと思って行って来なさい!』なんて言って。転校するまで時間は空いたんだけど、そうやって毎朝送り出されて結局不登校にはならなかったんだ」
「かっこいいお母さんだね」
ここでようやく言葉が私の口から出た。
素直にそう思ったのだ、勇ましいというか決断力があってでも日下さんを大事に想っているお母さん。
日下さんは「あはは、そうかな」と声に出して笑ってから、ポケットに入れていたらしい携帯電話を取り出した。
「あのときから、あたしは『本当に辛いときは逃げよう』って思ってるの。逃げて、逃げた先で頑張って、いつか振り返ってやろうって。実はねー、当時あたしのことからかってた奴のひとりは皐次郎なんだなー」
「ええっ」
「あとで皐次郎からかってやってよ」と笑いながら言う日下さんは、そんな過去があったなんて思えないほどきらきらしているように見える。
お母さんはあたしに『いじめられる原因は何だと思うの?』ってとことん突き詰めてきて。で、たぶん太ってることと暗いこと、って答えたら『じゃあ今日からダイエットよ! お母さんがきちんと栄養管理してあげるからね!』って言いだして。
しかも『じゃあ明日から毎日ひとりには必ず笑顔でおはようって言いなさい!』って。
次の日お母さんはあたしの髪を綺麗に結ってくれて、美味しいご飯を食べさせてくれて。
それで『今日が最後だと思って行って来なさい!』なんて言って。転校するまで時間は空いたんだけど、そうやって毎朝送り出されて結局不登校にはならなかったんだ」
「かっこいいお母さんだね」
ここでようやく言葉が私の口から出た。
素直にそう思ったのだ、勇ましいというか決断力があってでも日下さんを大事に想っているお母さん。
日下さんは「あはは、そうかな」と声に出して笑ってから、ポケットに入れていたらしい携帯電話を取り出した。
「あのときから、あたしは『本当に辛いときは逃げよう』って思ってるの。逃げて、逃げた先で頑張って、いつか振り返ってやろうって。実はねー、当時あたしのことからかってた奴のひとりは皐次郎なんだなー」
「ええっ」
「あとで皐次郎からかってやってよ」と笑いながら言う日下さんは、そんな過去があったなんて思えないほどきらきらしているように見える。