「それで話したのね……いやあれは寧ろ尋問というか。
そうしたらお母さんどんと胸張って『転校しよう!』って言ったの。いきなりだよ? わけがわかんなくて今度はあたしが目まんまる」
その笑顔が、とても可愛らしく見えた。
そしてとても誇らしげに。
「でもさすがに逃げるみたいでさー……イヤだって言ったんだよね、あたし。妙なところで意地を張って。
だけどお母さんはね『逃げて何が悪いの? 本当にいけないのは逃げる勇気がないことよ!』って変なところで自信満々で。
押されるままに頷いたらその日のうちに引っ越そうっていう話になっちゃってさ。
お父さんもおかしいの、夜話を聞いたら『お父さんは郊外に一戸建てを建てることが夢だったんだ!』とか言っちゃって。
さすがに弟は渋ったけどね、友だちと離れたくないって。
だからそんなに遠い距離を引っ越したわけじゃないんだけど、お父さんの仕事もあるし。
それでも学校が変わって、周りの友だちが変わって。あれはあたしを変える転機になったかな」
ふふふ、と笑う彼女と一緒に、私も何故かちょっとずつ気持ちが浮上してくる。