「弥八子、それ半分こしない?」
そんな中日下さんがクリームパンとカフェオレのペットボトルを持ってきて私の隣に座って来てくれた。
私の机の上にはよもぎ餡ぱんと紅茶のペットボトル。
「うん、そうしよう」
どちらも好きなものだから、日下さんとほぼ同時に封を破ってパンを半分に割った。
「はい」と渡してくれる彼女の顔が、優しい。
だけどちょっと気になってることもあった。
たまに日下さんは辛そうな、何かを思い出すような表情を見せる。
そして厳しい口調で意見を言うこともある。
私は彼女のことを明るくて楽しいムードメーカーのようなひとだと思っていたけれど。
本当は、彼女にも思うところが色々あるのだろうか。
「あたしさ」
疑問に思いながら紅茶を口に含んだとき、日下さんが照れたように笑った。
「昔いじめられてたんだ」
それは、唐突な告白で。
でもその顔は悲しくも辛くもない……ううん、頑張って笑っているように見えて。