「乾は単に引き金で、俺らにも原因があるんじゃ、って考えないのか」
さっき私は彼の行動が優しさなのか同情なのかわからない、と思っていた。
だけどきっと同情なんかじゃない。
それぐらい、今の彼には揺らぎがなかった。
けっして同情なんかで行動するようなひとじゃないと感じた。
霧崎君はたぶん私が原因じゃない、とは考えていない。
『引き金』と言ってくれたけど、それは私が飛び降りたことで。
それを彼は容認もしないし、責めもしない。
ただ事実として、受け止めていてくれている気がした。
それも、私の希望かもしれないけれど。
「霧崎、お前は皆にも理由があると言うのだな」
腕を組んで立っていた大庭君がストレートに言う。
その声に首を戻すと、青野君と日下さんは何も言わずただ眉を寄せていた。