『勝手にしろ』と大野は小さくそう言う。


「……」


俯いているわたしを大野はゆっくりと見据えて、


「その口の色、似合わねえな」


そう言って、わたしに背を向けて歩き出した。


「美咲……本当によかったの?」


大野の背中とわたしを交互に心配そうに見て、彩香がわたしに声をかけた。


「……うん」


彩香に返事をして、わたしは大野に『似合わない』と言われた紅い唇をそっと噛んだ。