大野の低い声。


わたしに向けられた低い声。


「……出ない」


「どういうつもりだよ」


「……ほっといてよ」


「あ?」


「お願いだから……、ほっといてよ」


ゆっくりと大野の顔を見た。


もうわたしになんか構わないでよ。


気にしたりしないでよ。


優しくしないでよ。


こんなふうに目が合ったらわたし……


わたし……


目の前の大野に甘えて、寄り掛かりたくなってしまいたくなる。


このまま


『大野と一緒に行きたい』


そう言ってしまいたくなる。