「美咲、お待たせ」


進路の件で職員室に呼ばれていた彩香の言葉に振り向いた時。


ドキリとしたのは、大野が彩香の横に立っていたから。


大野に自分の唇を見られたくなくて、わたしは咄嗟に手の甲で口元を隠す。


「先生との話、終わった?」


大野を見ないようにして、彩香に近寄った。


「終わったよ、美咲、待たせてごめんね」


彩香が微笑みながら言った。


「じゃ、帰ろ……」


なんだか気まずくて、俯きながら足早に彩香の横をすりぬけて廊下へ出ようとした。


「部活、出ないのかよ?」