カバンを持ち上げた時、一瞬だけ見せた大野の表情に、わたしは大野の手首がよほど痛いのだとわかった。


「大野キャプテン、大丈夫ですか!」


「悪いな、オレの不注意で心配かけて」


駆け寄って来る部員達に囲まれながら、笑顔で返事を返す大野。


「よかった!来週の引退試合に大野キャプテンが出れなかったらどうしようかと思いましたよ」


ズキン、と胸を走る痛みに、不安を隠せず大野を見た。


「問題ねえよ、安心しろ」


部員達に囲まれた大野は、わたしを見て、そう言った。