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「なぁ、結局どうなんだよ」
ぼくは建物の屋上にいた。
さえぎるものが周りになく、西日が直接目に入る。
それは、向こうも同じだろうが。
しかし彼女は、さして気にしたようではない。フェンスもない屋上の端に、夕陽に向かって佇んでいた。
温度のちがう夕方の風が抜けるたびに、彼女の髪の毛は一本一本が、別の生き物のようになめらかにそよぐ。
彼女は、いつも幻想的だ。
「製也くん。 それって、どの結局なわけ? 宇宙人はいるのか問題? ステイラー式幽霊実在仮定理論? 寄生型UMAの日本上陸の有無? このあいだの告白の答え?」
「わざとか? わざとなのか!? どう考えても分かるだろ」
と、言いながら、ぼくは欲しい答えが帰ってこないことを直感的に理解していた。
出会ってから3週間ほどになるが、相手の素性はまったく分かっていない。聞いても、だいたいいつもはぐらかされるのだ。
はぐらかす意図があるのか、
会話する意思がないのか、
それすらわからない。
ただ同じ屋上に同じ時間にいるだけの関係。
それ以外の場所での関わりはない。
そんな状態を変えたくて、前回勢い余って告白してしまったのだ。
そんな、ぼくの後悔を知ってか知らずか、
彼女は、屋上の端でくるりと軽やかに踵を返した。
夕日が後光のようになり、表情はよく見えないが、神さまみたいだった。
「ふふっ、確かにそうだね。 もちろん分かっているよ。 答えはイエスだ」
「えぇっ! マジで!!?」
思わず疑ってしまった。
完全に予想外だった。
「あぁ、大マジだ。 宇宙人はいる。」
「そっちじゃない!!!」
「・・・・あぁ、もちろん。 私たち地球人をカウントせずにだぞ?」
「はぁ・・・」
ひとつ嘆息して、ぼくはいろいろと諦めた。
これは、そういう断り方なのだ。
勘違いしているふりで、振っている。
勘違いに乗るのが、今後の関係を考えると、正解だろう。
弱いぼくは、打算的な考えに逃げ込む。
なんて、厄介な人に恋をしてしまったのだろうか。
「・・・んで、宇宙人がいるとして、そいつらは何がしたいわけ? 侵略なの、観察なの?」
「いいや」
彼女は、頭をふって、満面の微笑で答えた。
「愛のためだよ」
それは、とても綺麗な瞬間だった。
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