橋本が奈都に父親だと名乗りたいと言い出した。


橋本の本気が伝わったから、奈都に話そうと決めたのだ。


「橋本先生が奈都と一緒に暮らしたいんだって。直ぐに父親と認められなくてもいいから、お父さんと一緒に暮らしてあげてほしいな。」


あら、泣き止んだ。


なんなのよ、その笑顔は。


「橋本先生が私のお父さんだなんて、嬉しい。ずっと父親の存在知らなかったから、正直お父さんと呼べるか、自信ないけど。」


無理しなくていい。


「15年も離れて暮らしていたんだから、直ぐにお父さんと呼べなくても、大丈夫だよ。」


ほら、又泣く。


泣きすぎて目が真っ赤だ。


「お腹空いちゃったな。夕食何にしようかな。店は止める事にしたからね。」


そんなに驚く事。


「なんで。 」


それは。


「私が仕事してたら橋本先生とすれ違いになるし、そんなの嫌だから辞めたの。店は多英ちゃんがやってくれる事になった。」


もう引き返せない。


阿紀の為にも家族と幸せに暮らしたい。


自由に生きるのは今日で終わりにする。



家族の大切さを教えてくれたのは、奈都なんだ。


奈都、ありがとう。


奈都と幸せになりたい。


阿紀、母さんたちを見守っててね。


阿紀の分も幸せになるから。