秋人と直人がいるからか、胸の苦しさは治まっていた。


私は笑えてるかな。


「どういう事。」


秋人が笑いながら話す。


「女装した直人が真人兄と、俺たちの後ついて来る事になったから、奈都は心配しなくていい。」


直人が女装するだなんて。


又、笑ってしまった。


「奈都、今笑っただろ。」


笑いを必死に抑えた。


「笑ってないよ。」


「絶対、笑った。」


秋人が吹き出した。


「直人は小柄だから、奈都より女ぽいかもな。」


ひどい。


でも、あり得るかも。


「酷いよ、秋人。」


クスクス笑うと。


「奈都、やっと笑ったな。」


うん。


「秋人、直人、ありがとう。」


その時母が病室に入って来た。


「琢磨が退院したかと思ったら今度は奈都が入院して、どうして過呼吸なんかになったの。」


ごめんなさい。


みんなに心配かけてしまった。


「心配かけてごめん。もう大丈夫だから。」


母さんが涙をこぼした。


「奈都までどうかなったら、母さんは生きてられないからね。琢哉さんも元気ないし、どうしたんだろ。」


琢哉さんが元気ないわけないよ。


元気ないのは私なのに。


琢哉さんは前に進もうとしてるんだから。


「琢哉さんは再婚を考えてるのに元気ない訳ないじゃん。」


母さんの涙が止まった。


「本当の話、相手は誰なのよ。」


口にしたくない名前だけど。


「南可憐だよ。」


母さんの顔色が変わる。


「南可憐って、阿紀を虐めた女でしょ。」


琢哉さんの再婚相手がなんで南可憐な訳、絶対許さない。


お姉ちゃん、こんな事になってごめんね。


琢哉さんの再婚を絶対止めなきゃ。


不幸になるのが分かっていて、このまま見過ごす事なんて出来ない。


琢哉さんと琢磨には幸せになってほしいから。


その為なら何でもするよ。