学校では人気があって受け持ちの女生徒から電話が掛かってきたり同僚らしき女性が家に来たりする事もあるが、妹の裸を見たぐらいで動揺するようでは和哉も未だ未だだなと碧は考えた。

こんな和哉だが碧にとっては頼りになる兄で、記憶が戻らないため学校でも打ち解けれず泣いてばかりいた妹を守ってくれたし、今の会社に就職したての頃は運転免許も無く自転車にも乗れない碧の為に毎朝車で送ってくれた。

もっともその時は和哉に想いを寄せる生徒が恋人だと勘違いして激しく詰め寄って来た事があったので最近は専ら徒歩通勤している。

『おい沖田、なんだお前傘なんか持って。こんなに晴れてるのに年寄り臭いぞ』

そう言いながら和哉の肩を叩いた男を見て碧は少し鼓動が早まるのを感じた。

『うるさいな金沢こそほっといてくれよ。天気予報で降るって言ってたんだよ』

口調こそ乱暴で和哉も肩に置かれた手を邪険に払いのけたが、金沢雅彦(かなざわ まさひこ)と和哉は学生時代からの親友で今も和哉と同じ蓬莱学園高校の教師をしている。