しかしいくら血の繋がりが無かろうとも碧には肇と夏美の記憶しか無いのだ。二人は絶対的に碧の両親だし、碧の帰る家は此処しか無かった。

コーヒーとクロワッサンの簡単な朝食を採った碧はもう一度自室に戻り紺の地味なスーツに着替えた。

ドレッサーに座り簡単なメイクを済ませると時計の針は8時を少し回っており慌てて階段を駆け降りる。

『碧、もう少し静かに歩きなさい、あなたも何時結婚しても良い歳なんだから』

夏美の忠告をウインクで返し踵の低いパンプスを蹴飛ばすようにして履く。

最近、夏美は事あるごとに見合い写真を見せたがったり、一日に何度も結婚と言う言葉が口を衝くようになってきた。

未だ何か言いたげな夏美の視線を感じながら勢いよくドアを開けて外に出る。