学校で習う様な知識は残っていたが生活に関する全ての事柄が碧の脳裏から欠落していた。

また、それに加え手掛かりになりそうな物を何一つ持っていなかった為、捜索願い等が出ていない以上警察も対応しようがなかった。

だから碧という名前も肇と夏美が考えた物だし、25歳という年齢も予想である。

もしかしたら、もっと若いかもしれないし30歳ぐらいなのかもしれない。

誕生日は肇夫妻が碧を発見した日になった。

漢字や算数の知識から肇が10歳と推定したに過ぎない。

碧には自分が一体どのような存在なのかさえ理解出来なかった。

ただ生まれたばかりのヒナが初めて目に入った物を親だと思い込むように肇と夏美を何処までも慕い、夜は毎晩夏美に抱かれて眠りに落ちた。