桜花は固まったまま何も言わなかった。

ただ懐かしくもガラリと変わっている印象の顔を見続ける。




「…紅光くん。

紅光くん。」



義影さん…ではなく理事長の呼びかけで我に返ると心配そうに覗き込んでくる理事長と、訝しげな顔をしている雫が目に入った。



「大丈夫かい?」



「えぇ。大丈夫です。すみません。」




「いきなり志賀財閥の御曹司が来たのだからね。

驚かない何てことはないだろう。

君には刺激が強すぎたか。


すまない。」


にこやかに笑う理事長を見つつ、桜花は雫を観察した。



引き締まっている体に程よく焼けた浅黒い肌。

こげ茶の柔らかな髪は明るい茶髪となっていて、その間から見える目は気だるそうに歪んでいるものの、昔と変わらず完璧であった。


雫は昔からこうだった。


つまりは美形。

この学校の風習からして生徒会に入るのは当たり前なのである。



そして桜花がそこまで考えて思うことは、自分の周囲の美形の多さ。


たまらずため息をつくが理事長に黙殺された。




「じゃぁ、志賀くん、頼んだよ。」




そういわれて桜花と雫は部屋を出た。