―――それから一時間ほどが過ぎ、場所を移して落ち着くことになった。
室内には私と桂木所長、そして気絶した長澤真人。
部屋の外には紫さんが控えている。
長澤は跳び蹴りを食らってからずっと気を失ったままだった。
「…所長。この人と知り合いだったんですか?」
沈黙が続き、耐えられなくなった私は最も聞きたい質問をぶつけてみた。
「こいつは同期。まぁ…たいして会話もしたことないけど」
事実だけを述べるように、桂木所長は答えた。
するとそのとき、長澤を寝かせていた長椅子がきしむ。
それと同時に彼は起き上がった。
「おはよう。長澤真人、くん」
響きは穏やかだったけど、決して穏やかな気持ちで話しかけているわけではない。
桂木所長はゆっくりと長澤に近づく。