―――バンッ!



「―――長澤ぁっ!」

私が助かることを諦めて目を閉じたとき、扉を蹴り破って、息を切らせたあの人が入ってきた。

長澤の手の力はみるみる緩み、私は床に座り込む。

涙で歪んだ視界に入るのは、初めて見る焦ったような表情の桂木所長だった。


「…桂木!」

二人、知り合い?

長澤が怯み、所長の名前を呟いた瞬間、桂木所長から跳び蹴りがお見舞いされた。

跳び蹴りは見事ヒットし、長澤は床に投げ出された格好になる。


―――って!
なんか意外にも強い!


なんて考えている間に、桂木所長は何回も長澤を壁にたたきつける。


「慎悟!やり過ぎだろ」

その言葉と同時に、紫さんと麻里奈、それに数人の社員が続いて資料室になだれ込んできた。

すぐに、紫さんは桂木所長をなんとか押さえつけ、麻里奈は震える私を部屋の外に導いてくれた。