「…だから、よろしく」

翌日、重い体を引きずってなんとか出社すると桂木所長は朝から厳しい表情で電話をしていた。

「おはよう」

私に気がつき、手を振ってくれる。

いつも通りのしぐさに、少し気が楽になった。


パソコンを立ち上げると、メールが一通届いている。
そのアドレスを見て、再び重い気分に引き戻されてしまった。

『m.nagasawa@・・・・・・.jp

 おはよう。
 15時に昨日と同じ資料室で。
 来なかったら森を次のターゲットにする。

 長澤真人』



――なんていう奴なんだ。

麻里奈は、私と長澤のことを知っている数少ない一人。
巻き込むわけにはいかない。

私の青ざめた顔を、桂木所長が見つめていたことなど、全く気がつかなかった。



「早百合。楽しみだな…」

その頃、喫煙室でたばこを片手に長澤が嫌な笑いを浮かべていた。