「え?もしかして婦長も『SHANGRI-LA』のファンなんですか?」


私はビックリして思わず聞き返してしまった。

だって婦長はもう50代で、『SHANGRI-LA』はどちらかというとヴィジュアル系・・・という程ではないが、私の見た限りでは若い人が好むロックミュージックを演奏してそうな人たちだからだ。

婦長って、演歌とか好きそうに見えるし・・・。



「失礼ね!私だって2年前ぐらいからずっとファンなのよ!特にHARUくん・・・最高に可愛いじゃない!!」


婦長はガラにもなくウットリとしてそう言った。

『HARUくん』とは誰なのだろうと一瞬思ったが、そういえばあの小柄な男の人は『晴』と呼ばれていたような気がする。


「ですよねー!!ホラ、やっぱり『SHANGRI-LA』知らないのなんて佐々木さんぐらいだよ!!」

「え?佐々木さん、知らないの?」


婦長は目を真ん丸くして私を見た。

私は何だか居心地が悪くなる。


「えぇ、まぁ・・・」

「若い子で知らない子がいるなんて、思わなかったわ~、今なんて一世を風靡してるって言っても過言じゃないんじゃない?」

「そ、そんなに?」


私が驚いていると、鈴木さんは私の肩に手を置いた。


「ま、これを期に佐々木さんもファンになりなよ。明日もシフト入ってたよね?雑誌持ってきてあげるよ」


そんな話を鈴木さんと婦長に朝方まで延々と聞かされる羽目になった。

正直、それほど興味が湧かなかったので、適当に流してほとんど頭の中に残ってはいない。





患者さんが目を覚ましたのは、丁度朝日が窓から差し込んできた時ぐらいだった。