「さ、佐上さん・・・」
「色々喋ってみれば、何か少しでも思い出してくれるかと思った・・・甘かったみたいです・・・」
「でも・・・雪村さん、この間ちゃんと自分の名前を思い出したんですよ。それに、こんなに喋った雪村さん、初めてでした」
「だってあれはただ口喧嘩しただけだったから・・・。次はまた口聞いてくれないかもしれない・・・」
ぐすぐすと鼻をすする音が部屋中に響く。
涙はとめどなく溢れていた。大洪水だ。
「そんなことないですよ。ほら、また友達になったんじゃないですか」
私がそう言うと佐上さんは黙って頷いた。
「・・・ごめんなさい、俺・・・」
手で涙をごしごしと拭う佐上さん。私は棚からタオルを取り出して彼に渡す。
「・・・ごめんなさい」
佐上さんはそれだけ言ってタオルで濡れた手と顔を拭いた。