「どうぞ」




佐上さんを私の部屋に招待してお茶を淹れて出すと、可愛い笑顔が返ってくる。


「ありがとうございます」


しばらく無言のままお茶を飲んだ。

私たちは疲れていた。短期間の内にお互い色々あったのだから、無理もない。







「本当は・・・」






急に佐上さんが口を開いた。

さっきとは打って変わって暗い声に聞こえた。







「本当は、すごく怖かったんです・・・」








佐上さんの手が震えていた。湯飲に残ったお茶の水面がそれに合わせて振動している。



「また、突き飛ばされるんじゃないかって・・・この間の樹だと思うと、怖くて怖くて・・・」



佐上さんの後ろの窓から見える風景は、もう日が沈みかけていた。

地平線は遥かに明るいのに、ほのかに暗い青色が空高くあった。

オレンジから青のグラデーションが綺麗だった。






「樹・・・本当に俺のこと忘れちゃったんだ・・・・」





その瞬間、佐上さんの瞳から大粒の涙がボロボロと零れだした。

突然のことに私は慌てる。