佐上さんが買ってきたテレビカードを、雪村さんは素早く奪い取ってテレビに差し込んだ。

雪村さんは最初のうち、「テレビ小せぇ!」とか「知ってる番組がない!」とか色々と愚痴っていたが、サッカーの試合にチャンネルを合わせると大人しくなった。

私と佐上さんは顔を見合わせて退室することにした。


「雪村さん、私は部屋に戻りますね。何かあったら連絡ください」

「ん」

「じゃぁ、樹。俺も帰るね。また来るから」

「・・・次来る時はメロン買って来い。高いやつな」

「うん、わかった。・・・じゃぁね」

「ん」


雪村さんはテレビから視線を逸らさなかったが、確かに佐上さんと普通に会話をした。

これは大きな進展だ。今日だけでこんなに変わるなんて思わなかった。



雪村さんの部屋から出ると、二人同時に深いため息をついた。



「うはっ、佐々木さん疲れたでしょ、ごたごたしちゃってごめんなさい」


「そんなこと・・・私も本当に嬉しかったんですから!佐上さんこそ、お疲れみたいですから・・・あ、お茶飲んでいきます?」



私がそう言うと佐上さんは太陽みたいにニッコリ笑った。





「じゃぁ、お言葉に甘えて」