「今日はお花しか持って来れなかったけど、次は何か美味しいもの持ってくるよ。これからは頻繁に来れそうなんだ」

「断る」


雪村さんは断言した。


「なんで?」

「知り合いでもない奴に見舞われる筋合いはねぇ」

「でもね、樹。樹と俺たちは・・・・」


「知らねぇよ。わかんねぇんだ。自分の名前は思い出したけど、それ以外のことなんて、さっぱりなんだ。いきなりあんなこと言われて、はいそうですかって友達面できるかよ。俺はお前のこともあいつらのことも、知らない。友達でも仲間でも何でもない。だからもう帰ってくれ、そして二度と来るな」


それは悲痛な叫びだった。


雪村さんはずっと俯きながらそう言った。


表情なんて見えなかった。

しかし、硬くシーツを握る両腕が全てを物語っていたのだ。



私はまた雪村さんがヒスを起こす前に佐上さんを退出させた方がいいと考えた。


今日のうちは一旦、佐上さんにお引取り願おうと思った、その時だった。